危ない取引先(経営者編)の見分け方をお教えいたします。特に経営者の動向や噂には要注意です。手形割引のプロが教えるワンポイントアドバイスです。
最近、上場企業や老舗といえどもいつ倒産するかわからない時代となりました。特に民事再生法施行後は、企業の倒産するまでの時間は、以前に比べかなり早くなって来ています。そのような状況において、今までの取引先が、これからもずっと大丈夫という保証は、ありません。取引先のちょっとした変化を見逃さず、与信管理に役立つポイントをお教え致します。
中小企業の経営者は殆どが自分で創業した初代目であり、大なり小なり或る程度のワンマンで現在までやってきた経営者が多い。 しかし、分不相応な外車、接待ゴルフ、海外旅行、政治好き等は従業員からも見はなされ、社業の不振を招くことになる。
賭けマージャン、競輪、ボート等ギャンブル熱が膏じて倒産した例は多い。社業不振を挽回する為にまったく関連のない新分野に手を出したり、新規プランをあっちこっちで発表し、そのうち計画倒れになるハッタリ屋の経営者、事業よりもギャンブルに金と時間をとられるようになったら重症と思わなくてはいけない。
経理は会計係にまかせ、バランスシートの見方もわからないオオマンでルーズな 経営者は零細企業に意外と多い。どこから金を借りているのか、手形のやりくりも判らない、正確な帳簿もつけていない。組織や運営が個人企業に毛の生えた程度のところでは、ワンマン社長に万一のことがあると、つぶれてしまう危険性が大きい。
社長の朝の出社が10時、11時となる場合は、前日の夜に金策に走り回っていたり、また融手の相談に時間をとり、翌朝つかれた顔で遅く出社するようになると、累積赤字が増加していると見てよい。 優秀企業の社長や努力する社長は、朝7時から8時までに出社し経営対策に頭を練っている。早朝に相手方に電話を入れて、直接社長の応答がある会社はこれから伸びる会社である。
社業不振が続き経営が悪化してくると、代表者は金策に追われ会社を不在にして融手の書換え、銀行の借入金の借換え、取引先に対し支払猶余等多忙を極める。社長の活動時間は資金繰りに追われ、本業の社業推進の時間がおろそかになる。
融通手形を書いて貰うには、夜間特に頼みに行かねばならない。社長は金策に追われ、また融手の決済に追われ、段々疲れてくる。睡眠も不充分となり朝の出社時間も遅くなって、昼頃疲れた顔で出社してくる。 日頃の社長の行動には常に注意を払うことが大切である。
中小企業は殆どが同族会社である。 親子、兄弟が仲良くやっている時は良いが、代表者が死亡して相続でトラブルが発生したり、また別の人間が経営を引継いだりすると、同族会社の役員間で内輪揉めが始まる。こうなると、別の役員が従業員を連れて独立したりする。 社歴も古く中堅以上の会社にこのような組織の崩れが見えてくる。相手先の役員構成も常時チェックすることが必要である。
新しく会社を設立して独立開業した経営者は、最初の3年位はガムシャラに働く。開業した時は後発企業でお客も少なく、競争も激しいが、努力の結果ようやく先行きが明るくなるには最低5年位はかかるものである。企業がようやく安定し、伸びてゆくには約10年位の歳月が必要である。 社歴5年未満位で派手に交際費を使ったり、安易な経営多角化を計ったりする経営者は、未熟で向う意気の強い営業マン型経営者に多い。殆どが零細資本であるから開業3年未満位でつぶれる会社が多く、注意警戒を怠らないことだ。
経営の悪化が進んでくると、腕きき社員や中堅幹部の退職が出始める。 経営者は資金繰りに追われて社内に目が届かなくなる。有能な社員が社長に進言や提案をしても、社長はどなりつけたりして受け入れない。 幹部はいや気をさして部下を連れて退職し、独立して同じ商売を始め、元部下は商売敵きとなる。このような時は退職した元幹部の自宅を訪問すると実状がよく判る。 取引先の社長だけでなく、幹部とも友達になっておくことが大切である。
社長が空席のまま専務が社長代行として立派にやっている会社もたまにはあるが、これらはいずれ社長就任も近々にある場合が多い。社長の長期欠勤や長期療養は社員の士気に大いに影響する。 中小企業は代表者、即ちオーナーの信用で持っているのだから、社長の健康状態は即会社の信用状態となる。相手先を時々訪問して社長代行の役員と面接をしながら、社内の空気をのぞいてみると面白い。
ダルマではないが七転八起した経営者は沢山いるし、また現在一部上場会社の社長でも昔、自分の会社を倒産させた経歴のある社長もいる。しかし、度々倒産を繰返し、また新会社をつくって商売を始めるが、世間の信用はゼロで、銀行や世間のすべては皆警戒するものだ。 新規取引を始める時は必ず相手の法人登記を閲覧し謄本を取り、パクリ屋ではないか、また以前に倒産前歴のある会社か、休眠会社の商号変更ではないか等をよく調査することだ。